人事・労務担当者が教える法的知識と実践ガイド_【Vol.1】

それ、ハラスメントかも?今さら聞けない基本の「き」と法改正
皆様、こんにちは。 人事・労務担当のフクさんです。
いよいよ夏本番!暑い日が続きますが、皆さんいかがお過ごしですかな?
暑いとついイライラして、言葉も熱く(暑苦しく)なりがちですが、職場の空気までアツくならないように気をつけたいものですな。熱中症と「熱中指導」のしすぎには、くれぐれもご注意を…なんて、失礼しました。
さて、「ハラスメント対策」をテーマに、皆様の職場環境をより良くするための情報をお届けします。
第1回の今回は、全ての基本となる「ハラスメントの定義と法律のポイント」です。
なぜ今、ハラスメントがこれほど問題に?
最近、ニュースやドラマで「ハラスメント」という言葉を頻繁に耳にしませんか?
かつては「厳しい指導」や「冗談」として見過ごされがちだった言動が、今では個人の尊厳を深く傷つける重大な問題と認識されています。
働き方が多様化する現代、一人ひとりが安心して能力を発揮できる職場環境は、企業が成長するための不可欠な土台です。
だからこそ、今、私たちはハラスメントについて正しく学び、向き合う必要があるのです。
あなたの「常識」、大丈夫?基本の定義
自分では「これくらい大丈夫」「指導の一環だ」と思っていても、相手はそう感じていないかもしれません。その「ズレ」がハラスメントの入り口です。まずは代表的なハラスメントの定義を確認しましょう。
✅パワハラ(パワーハラスメント)
職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えること。
✅セクハラ(セクシャルハラスメント)
労働者の意に反する性的な言動で、職場環境を悪化させること。
✅マタハラ(マタニティハラスメント)
妊娠・出産・育児などを理由に、嫌がらせや不利益な取扱いをすること。
これらは氷山の一角です。あなたの「常識」が、誰かの「非常識」になっていないか、一度立ち止まって考えてみましょう。
「知らなかった」は通用しない!法律の義務
2022年4月から、企業の規模を問わず、すべての会社に「パワハラ防止措置」を講じることが法律で義務化されました。
これは「知らなかった」では済まされない、明確なルールです。
法律は、企業に対して主に以下の4つの対応を求めています。
- 📌1.ハラスメントは許さないという方針を明確にし、全従業員に周知・啓発すること。
- 📌2.相談に適切に対応できる窓口を設置すること。
- 📌3.問題が発生したら、迅速かつ適切に対応すること。
- 📌4.相談者のプライバシーを守り、相談したことによる不利益な取扱いを禁止すること。
会社として、これらの体制をしっかりと整える責任があります。
人事が伝えたい!ハラスメント3つの核心
ハラスメントを理解する上で、特に押さえていただきたい核心を3つに整理しました。
✅1.「意図」ではなく「受け手の感情」が重要
たとえ冗談や指導のつもりでも、相手が不快に感じ、尊厳を傷つけられたと判断すれば、ハラスメントになり得ます。
✅2.「業務の適正な範囲」がパワハラの境界線
指導が全てパワハラになるわけではありません。その指導に業務上の必要性があり、社会通念に照らして相当な範囲で行われているかが判断基準です。
✅3.企業と個人、双方にとっての重大リスク
ハラスメントは被害者だけでなく、行為者、そして会社全体に深刻なダメージを与えます。法的責任や社会的信用の失墜など、その代償は計り知れません。
まずは自分ごととして捉えることから
今回は、ハラスメントの基本と、法律で定められた企業の義務についてお話ししました。
自分自身の普段の言動を振り返り、職場の仲間を尊重する意識を持つこと。
それが、ハラスメントのない快適な職場環境づくりの、最も重要で確実な第一歩となります。
次回は、判断に迷うことも多い「グレーゾーン・ハラスメント」について解説します。